東京大学生産技術研究所の藤森照信(現・工学院大学)と村松伸による、中国清華大学建築学院教授汪坦と張復合を主パートナーとする「東アジア近代の建築遺産の基礎的調査研究」は、1988年~1991年にかけ、トヨタ財団の学術助成を受けて実施された。
中国の16都市に残る近代建築の全調査を、各地の研究者と共に進め、『中国近代建築總覽』(中国建築工業出版社、1992年~96年)として出版した。
また、韓国等その他地域でも調査が実施され、その全体は、『全調査・東アジア近代の都市と建築』(筑摩書房、1996年)として結実している。
そして2000年代からは中央アジアや東南アジアへと調査地域を拡大してきた。
初期の調査から約20年を経た今、その後のアジア諸国の経済成長、グローバリゼーションのなかで、調査の背景にある社会的問題や学術的意味も変化してきている。
それに応じ、調査の手法も変化を遂げている。
調査が開始された20年前の段階では、19世紀以降のウェスタン・インパクトによるアジアの都市や建築の変容の記録するために、主に旧植民地宗主国の行政都市や貿易都市において、西洋風建築を中心とした近代の歴史的建造物を調査・記録していた。
しかし調査が進むにつれ、単なる西洋化ではない、例えば日本における和洋折衷や擬洋風など、それまでの歴史的蓄積と混交し合って生まれるアジアの各地域独自の「近代」が存在することが、建築史研究が進む中で明らかになり、そのような建築も調査対象に取り入れるようになった。
さらに近年の東南アジアにおける調査では、環境問題などへの関心の高まりから、建築のみならず、その周辺の構造物や自然環境の要素までを含めて取り扱い、それらを総称して「都市環境文化資源」と定義し、調査対象を広げてきた。
本データベースは、最初期の中国から最新のジャカルタに至るまでの上記近代建築調査の成果の中から、質の高い物件を選び、掲載した。
1988-1989:
China: Harbin、Qingdao、Yantai、Jinan、Wuhan、Nanjin、Guangzhou、Shanghai、Tianjin
Korea: Seoul、Inchon、Gunsan、Mokpo、Busan、Daegu
1990-1991:
China: Beijing、Dalian、Shenyang、Xiamen、Chongqing、Yingkou、昆明、Lushan、Jinan
Hongkong
Macau
Taiwan: Taipei、Danshuei、Taichung、Tainan、kaohsiung
1995:
China: Changchun
1998:
Vietnam: hanoi、Hai Phong、Da Nang
1999:
Vietnam: ナトラン、Ho Chi Minh
1999~2003:
Thai: Bangkok
2002:
Indonesia: Medan
Malaysia: Melaka
2004:
Indonesia: Padang、Bukkitinggi、Sawalunto
Mongolia: Ulaanbaatar
Uzbekistan: Samarkand
2005:
Indonesia: Jakarta
2007:
Indonesia: Jakarta、Bogor
2008:
Indonesia: Palengbang
2009:
Indonesia: Semarang
【文責: 鮎川】